「周りが就職しろってうるさいんだけど、正社員とフリーターって何が違うの?お金もらえればいいじゃん。」「正社員しんどいからフリーターになりたいな…、でも年金とかどうなるんだろう」
平成30年度の厚生労働省の調査によると、正社員として働く20代は約72.5%。それ以外が27.5%とのことでした。リモートワークの増えるこのご時世、どんどん自宅で出来る仕事も増えて、個人事業主が労働者の3分の1を占めるようになるとも言われています。
そんな中で、フリーターや個人事業主として生きることと正社員として生きることでは何が違ってくるのでしょうか。
フリーターは年金が貰えないのか。フリーターとして生きていくために必要なスキルなどはあるのか。
今回は正社員とフリーターの違い。フリーターに向いている人や、生きていく自信がなくなってしまった場合に頼れる制度などを紹介致します。
フリーターと正社員の違い
正社員になって感じたフリーターのメリットは、正社員に比べて責任が軽いことや時間に拘束されないこと。けれど正社員と同じようにフルタイムで長期間働かないことには社会保険に入れなかったり、自分で年末調整を出す必要があったりして大変な点もありますよね。
まずはそういったフリーターと正社員の違いをまとめてみました。企業や、雇用条件によってはまた変わります。
フリーター | 正社員 |
---|---|
・賞与の制度はない ・退職金はない ・会社が不安定になった際、解雇される可能性がある ・年金受給額が正社員の半額程度の可能性がある ・働いた分しか給料は貰えない ・ローンを組む際に通らない可能性がある | ・賞与という制度がある ・退職金がある ・一度正社員になると、簡単には解雇されない ・厚生年金に加入できるため定年後も比較的安定している ・月給が固定 ・ローンの審査に通りやすい |
上記の表のように大きく6つの違いがあります。さて、それぞれを詳しく見ていきましょう。
正社員には「賞与」という制度がある
「賞与」とは、またボーナスとも呼ばれるもので、会社によって年に2,3回支給されるものです。「賞与」は義務ではないため、正社員でも、賞与という形での支給が全くない会社もあります。そういった会社はその分、月給が高いなどの特徴があります。
一方、フリーターには職種によってインセンティブ制度はあるかもしれませんが、基本的に賞与という制度はありません。
正社員には退職金がある
「正社員には退職金がある」という話をする前に、退職金とはそもそも何なのかをお話します。
【退職金とは】
老後の生活保証に役立てられる積立の制度。最近では確定拠出年金という形に変わってきている。
これも勤続年数や、役職、退職理由や、企業の規模によって変わってきます。例えば、4年制の大学を卒業して、そのまま大企業に就職した場合の勤続年数別の退職金額がこちらになります。
勤続年数 | 会社都合退職 | 自己都合退職 |
3年 | 69万円 | 33万円 |
5年 | 124万円 | 63万円 |
10年 | 313万円 | 186万円 |
15年 | 588万円 | 408万円 |
20年 | 966万円 | 802万円 |
一方でフリーターには勤続年数や役職に関わらず、退職金という制度はありません。そのため、自分で老後の資金を積み立てる必要があります。
フリーターや自営業者のための積立制度として「個人型確定拠出年金制度」というものがあります。5,000円から1,000円単位で6,8000円まで積立をすることが可能です。通称iDecoと呼ばれるものです。原則として20歳以上60歳未満の方ならどなたでも加入できます。
iDecoの簡単な仕組みは①積立金額を決める。②金融機関に予め用意されている金融商品の中からひとつまたは複数の商品を選び、「運用」。③原則60歳以降に一括または分割にて受取可能になります。
個人型確定拠出年金に加入する際には以下のものを用意しましょう。
- 基礎年金番号
- 金融機関の届出印
- 掛け金引き落とし口座
- 掛け金額
掛け金額は1年に1度だけ変更可能です。
iDecoは全国の金融機関にて加入可能です。金融機関によって、取り揃えている商品などが違うため、詳しく知りたいかたはこちらのサイトをご参考ください。
原則60歳になるまでは引き出せなくなっているため、金銭管理が苦手な方にもおすすめです。
正社員は簡単には解雇されない
正社員は「労働契約法」にて解雇規約が厳しく、簡単には解雇されません。そういった点で、会社が倒産しない限りは収入が安定していると言えます。
一方、フリーターは会社の経営が危うくなった際に、正社員に比べると解雇されやすいため、収入が安定しません。
フリーターは年金受給額が正社員の半額程度の可能性がある
まず、年金には2種類あります。ひとつは「国民年金」でこちらは日本国内に住む20歳以上60歳未満の国民に加入の義務があります。もうひとつは「厚生年金」で、こちらは厚生年金制度の適用されている企業に正社員で勤めている人が対象のものになります。
「厚生年金」は適用されている会社とそうでない会社があるため、今後就職を考えられている方は、「厚生年金」が適用されているかどうかも企業選びの基準に含めたほうが良いでしょう。また、企業や働き方によっては、アルバイトやパートなど非正規雇用の方もこの対象になることがあります。
厚生年金は「報酬比例部分+経過的加算+加給年金額」で計算されます。ぱっと見ただけでは、なにがどう足されているのかわかりませんよね。簡単に言うと、次のようになります。
- 報酬比例部分→平均月収×加入期間×生年月日
- 経過的加算→65歳以上の老齢厚生年金に加算されるもの
- 加給年金額→年金に対し扶養手当のように加算されるもの。(厚生年金保険の加入期間が20年以上または中高齢者の特例で特別支給の老齢厚生年金または65歳以後の老齢厚生年金を受ける権利を得た方が、65歳未満の配偶者を扶養しているときに支払われる)
この厚生年金の支給平均額は6万円ほどと言われています。例えば25歳から60歳の定年まで35年間企業勤めをした場合には毎月「国民年金6万円+厚生年金6万円」が支給されますが、フリーターの場合には国民年金の6万円のみになります。
そのため、フリーターや自営業の方は正社員に比べて計画的に貯蓄を行う必要があります。
フリーターは働いた分しか給料がもらえない
正社員が毎月固定で給料が出るのに対して、フリーターは働いた分しか給料は貰えません。それがどういう事かと言うと、例えば風邪などで働けない日があると月の収入にも支障が出てくるということです。
また、正社員と違って有給もありません。自由に思えるフリーターですが、そう考えてみると必ずしも自由な時間を多く持てるわけではなさそうです。
フリーターはローンを組む際、審査に通らない可能性がある
家や車を買うことになった際、正社員だと通る可能性が高いですが、雇用の安定しないフリーターだと審査に通らない可能性があります。またローンを組んでお金を借りられるとなった際にも、収入の1/3までなどと上限が厳しく設けられているため、大きな買い物をする際に不利です。
お金の使い方を、正社員よりも計画的に行う必要があるのもフリーターの特徴と言えるでしょう。
フリーターの5つのメリット【働き方を自分で決めやすい】
さてここまでフリーターと正社員の違いをお話してきましたが、ではフリーターのメリットとは何でしょうか。まとめてみました。
- 残業が少ない
- 働き方を自分で決めやすい
- 責任のある仕事を任されることは少ないため気が楽
- 副業ができる
- 仕事が合わなかった際に辞めやすい
フリーターのメリットは自分で働き方を決めやすく、責任の思い仕事を任されることも殆どないため気が楽というメリットがありました。給料が多く欲しい時には多く仕事を入れたり、やってみて合わないと思ったら辞める時も正社員に比べると随分と楽です。
また、夢を追っている人などは自分の時間を作りやすく、副業も可能なことからフリーターを選択することも多いでしょう。
自由に働けるぶん、自己管理能力が肝心になってきます。
フリーターでいることの4つのデメリット【ローンの審査に通らない可能性がある】
続いてフリーターでいることのデメリットは何でしょうか。
- 退職金や厚生年金が貰えないため個人の金銭管理能力が肝心になってくる
- ローンの審査に通りにくい
- 会社が傾いた際に解雇されやすい
- 病気などで休むと給料がもらえない
厚生年金に加入できないため、年金の受給額が少なくなることや、退職金がないこと、ローンの審査にも通りにくいことから個人の金銭管理能力が肝心になってくるというのがフリーターでいることの特徴ということがわかりました。
また正社員に比べて解雇されやすいため、仕事がいつなくなるかわからない不安に耐える必要もあります。
メリットとデメリットをよく比べた上で、フリーターでいるか正社員として働くかを決めましょう。
正社員の4つのメリット【病気で休んでも給与が出る】
- ローンの審査に通りやすい
- 年金の管理を会社がしてくれる(厚生年金制度に加入している企業のみ)
- 病気などで休んでも給料が出る
- 簡単には解雇されない
正社員は、労働契約基準法によって簡単には解雇されないようになっています。そのためローンを組む際にも審査に通りやすいです。特に家庭を持った時に、ローンの通りやすさは大事になってきます。
家や車を持ちたいと思ったときにも、ローンが通らないと自分で貯金する必要が出てきますが、そうなるとひとつの目標を叶えるのに何年、何十年とかかることになります。
病気などで休んでも毎月固定給が出る点など、正社員の方が生活が保証されているという印象を受けます。
正社員の4つのデメリット【長期休暇が取りにくい】
正社員の方が生活の保証がされているとメリットをお話しましたが、そのために生じるデメリットは一体何があるのでしょうか。
- 長期休暇を取りづらい
- 副業不可の事がある
- 自分の時間をつくるのが難しい
- ブラック企業だった場合に心身ともに崩す
大きく4つのデメリットが挙がりました。フリーターのメリットは「働き方を自由に決められる」点でしたが、正社員はその反対に働き方を会社の規定に沿わせる必要があります。そのため1週間以上の長期の休みをつくって旅行をしたり、習い事をしたりすることは難しくなります。
また任される仕事にも責任が生じるため、身体だけでなく心も疲れてしまって、帰宅後や出勤前に自分の時間をつくることも難しくなってしまう人もいます。但しほんの少しでも日々に自分時間を作って、毎日の仕事を頑張っている人が殆どです。始めは難しくても、仕事になれるうち自分の時間をつくれるようになるでしょう。
自由に働きたいか、安定した生活のなかで幸せに生きたいかによって選択しましょう。
フリーターに向いている人【生活能力のある人】
これまでにお話してきた事を踏まえて、フリーターに向いている人とそうでない人をまとめてみました。
フリーターに向いている人
- 貯金が得意なひと
- 社会情勢に興味を持てる人
- コミュニケーション能力のある人
フリーターとしてずっと生きていく為には、自分で金銭管理をしっかり行わなくてはいけないと散々書きました。その他にもフリーターは会社に解雇される可能性が正社員と比べた時に高いことや、その時々に合わせて仕事を変える必要が出てくることから、採用したいと思われるだけの人当たりの良さが必要になってきます。
正社員として生きる以上に、フリーターで生き続けることはハードルが高いように感じました。
フリーターとして「人生100年時代」を賢く生きるためには
フリーターとして一生を生きていくことも決して不可能ではないでしょう。しかし正社員と比べた時に個人の生活能力がより必要になってくることがわかりました。
それでもフリーターとして生きていく場合、気をつけたい点をまとめした。
- 老後のことまで考えて積立をしよう
- 家庭を持った場合なども想定して(積立以外に)貯金をしよう
- 病気などに罹った場合のことも考えて保険に加入しよう
- 周りの人とのコミュニケーションを大切にしよう
フリーターとして「人生100年時代」を賢く生きていくためには、上記の4点が大切です。
正社員であれば所属しているだけで会社がやってくれる事を、フリーターは自分の力で行う必要があります。人には向き不向きがありますし、必ずしもどちらが良いとは言えません。ただ、将来自分が苦しまなくて済むように、出来る限りの配慮をしましょう。
また、どうしても困った場合にも生きていけるように日本は出来ています。フリーターとしても、社会人としても生きていけなそうだと思った場合の対処法を次の項目でお話します。
もう生きていけないと思ったら
日本に生まれて良かったと思う理由のひとつは、生きていくのに困った人のための制度があることです。最後にこの制度のお話をします。
- 頼れる家族もいない・働ける状態じゃない人→生活保護受給
- 正社員として在職中で仕事を辞めたい人→休職
- 働きたいけれど何がしたいかわからない人→職業訓練校
ひとつひとつお話します。
生活保護受給の仕方
生きていけないと思った時、この6文字が頭をよぎる人は多いのではないでしょうか。よぎった瞬間、「でもどうせ受けられないよな」と思う方も多いようです。実際、生活保護の資格があるにも関わらず、申請が却下されたと嘆いている人がたまにSNSなどで話題になりますよね。
令和3年1月時点、日本には生活保護を受給している人が2,049,630人います。(厚生労働省HP参考)日本には1.258億人のためおおよそ0.16%の人が生活保護を受給している事になります。(204.9万人を205万人として)
では受給するための基準は何なんでしょうか。
生活保護受給資格
- 家族や親族からの援助を受けられない
- 世帯収入が13万円以下
- 病気やケガで働けない
- 預貯金や土地などの財産を持っていない
申込みの仕方
- 生活状況を証明できるものを用意する
- 住んでいる地域の福祉事務所へ行く
続いて、生活の状況を証明できるものは以下になります。
- 本人確認書(運転免許証・マイナンバーカード)
- 預貯金通帳
- 健康保険証
- 年金手帳
- 障害者手帳
- 診断書
- 家賃が分かる書類(契約書類など)
- 公共料金の領収書
- 収入がある場合には給与明細
これらがなくても一応申請することは可能ですが、持っていくと手続きがスムーズに進みやすくなります。
生活保護は本人の申請の意志が尊重されるため、「申請に必要な書類が揃っていない」などの理由で福祉事務所が申請書を受け取らないことは「水際作戦」と呼ばれ、法律違反です。また、申請書に決まった形式はないため、ネットでダウンロードしたものでも大丈夫です。
生活保護が受理されるまでの資金が無い方は、最寄りのハローワークなどで臨時特例つなぎ資金貸付を紹介してもらえます。臨時特例つなぎ資金貸付というのは、生活保護の受給が始まるまでの資金を無理しで貸してくれる制度です。
生活保護の受給可否は原則14日以内に決定されますが、特別なケースでは30日ほどかかる場合もあります。
参考サイト:https://www.hoken-station.co.jp/media/seikatsuhogo/#i-14
休職の仕方と資格
現在正社員で仕事をやめようか迷っている方は一度休職という選択肢もあります。休職のメリットは、休職期間も勤続年数にカウントできることです。一般的には就業していないためカウントされませんが、厳密に法律で決められていることではないため、勤続年数にカウントすることも可能です。
但し休職するとなった場合に気になるのは給与ですよね。休職中に給与を出すか否かは、会社が決めることになっています。そのため自己都合の休職の場合には基本的には出ません。その代わりに理由によって国から次のような給付を受けることができます。
休職中に給付される手当
- 病気やケガ→傷病手当
- 通勤中のケガなど労災→災害補償給付
- 出産前後→出産手当
手当によって給付額や期間は変わってきますが、傷病手当の場合1日当たり直近1年間の平均月給の2/3程度で、最長1年6ヶ月まで受給可能です。
もっと詳しく知りたい方はこちらのサイトを参照ください→MONEY JOURNAL
この記事が想定しているのは精神的苦痛などで働けなくなる可能性なため、これらの手当の中から「傷病手当」を抜粋させて頂きますが、傷病手当と聞くとどういうイメージがあるでしょうか。「1年以上勤続していないと給付対象ではないのでは」と実は私も以前はそう思っていました。しかし、実際には給付条件は以下になります。
傷病手当の給付条件
- 業務外の事由による病気やケガ
- 連続する3日間を含み4日以上就業できなかったこと
- 休業した期間に給与の支払いがないこと
またこれは健康保険から支払われるため、健康保険に加入している派遣社員やアルバイト・パートの方も対象になります。但し、退職してしまった後で受給する場合には条件が変わります。退職後に給付を申請する場合には、
被保険者の資格を喪失した前日まで1年以上被保険者であり、資格喪失時において傷病手当の支給を受けている人。
というのが条件になるため、1年以上被保険者でない場合にはこれは当てはまらなくなります。
傷病手当が難しい場合で、周りに援助してくれる人がいない場合には生活保護の申請をしましょう。
なにをしたいか分からない人は職業訓練校
転職のためのスキルを無料で教えてくれて場合によっては受講手当ももらえる「職業訓練校」。国や自治体が主となって運営しており、年間30万人に利用されています。受講期間は2ヶ月〜6ヶ月のものが多く、長いものだと1年〜2年のものも存在します。
受講に当たっては条件があります。
受講条件
- 過去1年以内に職業訓練を受講していない
- ハローワークに休職の申込をしている(離職者訓練のみ)
- ハローワーク所長の受講推薦または受講指示が受けられる(離職者訓練のみ)
PCの使い方を教えてくれるもの、プログラミング、介護、webデザイン、ネイリスト、エステティシャンなど様々なコースがあります。
興味のある方はハローワークに相談してみましょう。
詳しく知りたい方にはこちらのサイトがおすすめです。→おすすめサイト
最後に【急がば回れ】
今回、フリーターと正社員の違いというところから、生きていく自信がなくなってしまった方向けの制度までお話してきました。
色々と調べる中で感じたのは、誰でもどうにか生きていけるように先人たちが日本という国を作ってくれたのだということです。幼い頃に夢見たような人生かは別ですが、理想を高く見積もりすぎなければ、幸せになることは選べるのではないでしょうか。
また、自分の夢見た人生を歩める人はほんの僅かなのではないでしょうか。自分を過小評価することは良くないですが、自分に無理をさせすぎるような目標設定もまた良くないでしょう。
自分の身に起こったことを把握する間もなく退職を決めてしまいフリーターになった私が今思うのは、「急がば回れ」ということです。これまで焦って決断をしたために、何度自分を傷つけたことか。また1年以内に正社員として復帰しようという気持ちはありますが、それまでは地道に生活をすることで、人間不信的になってしまった自分の考え方も直していきたいと思っています。
フリーターとして生きることは不安定な橋の上に家を構えるようなものだと思いますが、だからといって焦って就職先を見つける必要はないのではないか。ということが、焦って就職した結果、半年後に知人の誘いで転職し、その結果色々あって、その色々をよく理解できないまま精神状態が崩壊して気づけば退職していた私の考えです。その色々から1、2ヶ月経ちますが、その色々に関しては未だに理解できないまま、ただもっと自分は社会の摂理を知るべきだと思ってこうやって調べ物をしてまとめているわけです。
今は思い出すと頭痛がしますが、いつかきっと立ち直っていると信じて、頑張ろうと思います。読んでくださったあなた様にも良い出会いがありますように。
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